去る11月2日、心理面接室TAOは10周年を迎えることができました。
たくさんの方に来ていただき、教えられ、支えられ、ここまで来ました。心より感謝申し上げます。
高校の国語教諭として25年間勤めた後、思い切って早期退職をし、TAOを開室して10年。様々な生きづらさを抱えた方々と語り合い、その人生に同伴させていただいています。
ああ、人ってこんな風に変わっていけるんだという感動をいただいています。変化はたいてい、私の予期しないところからやって来ます。もちろんクライエントさんにとっても驚きです。今までだったらこう思っていたのに、こうしていたのに、気が付いたら何かが違っている。変われた。心も体も軽くなった、と言われます。
数ヶ月でスッキリして卒業される方もいらっしゃいますが、たいていの方は数年以上に渡って通われます。長い方は開室以来ですから、もう10年になります。もちろん10年の間にはずいぶん楽になられていますが、1ヶ月に一度など、定点観測のようにいらっしゃって、自分を確かめてまた力強く日常に戻られます。
せっかく来てくださったのに、お役に立てなかったことも多々あります。傷つけてしまったこともあります。大変申し訳ないことです。さらに研鑽を積んでいかねばと、身が引き締まります。
TAO開室に当たって、カウンセリングだけでなく、セミナーもやりたかったことでした。
これまで、ユング心理学・対象関係論・交流分析など、ご参加のみなさまとともにみっちり勉強しました。ドリームワーク・コラージュ・カウンセリング演習などの体験的なワークは、なかなか他にはない場になっていると自負しています。
また、今は募集をしていないのですが、固定メンバーでのTAOエンカウンターグループを2つ、それぞれ2ヶ月に1回ほど実施しています。ちょうど10周年記念の先日、最初に立ち上げたグループのエンカウンターでした。最初からご参加の方々は、もう50回以上のご参加になります。温かい空気感の中で、その都度荷物を下ろして自分を取り戻していかれます。こんな人生になるとは夢みたいだ、とおっしゃっています。
開室以来一番大変だったのは、2年前の引っ越しでした。
築350年の古民家を改装した味わいのある部屋で始めましたが、オーナーの変更とともにすったもんだあり、移転を余儀なくされました。苦しかったですが、いい人生経験でした。結果的には、今の部屋もゆったり落ち着いて話ができ、使い勝手もよく、よかったです。人間万事塞翁が馬です。
もう一つは、今年4月のHPの大幅改訂です。1年近くもかかりました。内容は変わっていませんが、ブログやセミナー案内など、広告に煩わされずにスッキリと見ていただけるようになりました。
それから、コロナ禍のときははやきもきしましたが、おかげでオンライン面接が実施できるようになり、県外の方々ともつながれるようになりました。これも思いがけないことでした。
この10年間で世の中も目まぐるしく変わりました。分断が危ぶまれる世界情勢や気候変動には、暗澹たる気分になります。せめて、一人一人の心の平穏をと、この仕事に取り組んでいますが、ここにきて登場したのがAIです。
クライエントさんからも、AIにも相談してみたという報告を受けます。なかなか的を射た応答もあり、びっくりです。慰められたり行動の指針を得られたり、利用の価値ありと思います。それに、人間関係が苦手で人を恐れてしまう方には、AIの存在はどんなに心強いだろうと思います。
ただ、一般論として知ったり分かったりすることと、一人の人間が自分らしく変わっていくことは別です。頭で分かるだけで変わっていけるとしたら、楽なものです。
まず、自分の気持ちに自分で気づき、心底納得感をもって進んでいくことが肝要です。一人では難しいので、導き手が必要です。
そして、新しい自分になるためには、古い自分を捨てねばなりません。それはとても怖いことで、必ず抵抗も起こります。自分の独自性を明らかにして、どこからどう変えていけるのか、自分をいたわりながら丁寧に検討していきます。一発では楽になれない。手間も時間も掛かります。地道な日々の取り組みが必要で、その過程を心と心を携えて進むのがカウンセリングです。
それはまだ、AIには難しいのではと思います。
カウンセリングで目指すのは、治るとか元に戻るとか普通になるとかではなく、「変容」です。まるで蛹が蝶になるような、根源的な変化です。それまでが苦しい道のりではありますが、精一杯応援させていただきたいと思います。
少しでもお役に立てるよう、私自身も自分を見つめ続け、妥協のない誠実な人生を歩んでいかねばと思っています。
今後どもどうぞよろしくお願いいたします。
2025年11月 心理面接室TAO 藤坂圭子